✏心不全治療薬 アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)「エンレスト」についてまとめてみた
門前の先生は循環器が専門で興味があるということなので、発売されたら処方があるかも!?
というわけで、今回は、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)「エンレスト」について調べました!
添付文書などの詳細はこちらからどうぞ。
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エンレスト基本情報
一般名:サクビトリルバルサルタン
商品名:エンレスト
名前の由来:Entrust(信頼できる薬剤)に由来
すごいネーミングですね。本当に信頼でき・・いや、やめておこう・・・。
薬理作用:
バルサルタンによるレニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAAS)抑制作用に加え、サクビトリルによるネプリライシン(NEP)阻害作用を有する新規の薬剤。
NEP阻害により、生理活性を有するナトリウム利尿ペプチドの循環血中濃度が上昇し、ナトリウム排泄作用、利尿作用、抗肥大作用、抗線維化作用、及び血管拡張作用を示す。
効能効果:
慢性心不全
ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。
→ACE阻害薬/ARBの前治療のない日本人患者に投与した場合には、有害事象(低血圧、高カリウム血症、腎機能障害、血管浮腫等)の発現リスクがPARALLEL-HF試験での結果よりも高くなる可能性があることから、原則として既にACE阻害薬/ARBの投与がされ、血圧が良好に維持されていることを含め、ACE阻害薬/ARBに対する忍容性が確認された慢性心不全患者に対しての選択肢の1つとして承認
有効成分:
エンレスト50mg:サクビトリル24.3mg、バルサルタン25.7mgに相当
エンレスト100mg:サクビトリル48.6mg、バルサルタン51.4mgに相当
エンレスト200mg:サクビトリル97.2mg、バルサルタン102.8mgに相当
※ 添付文書では「50mg錠と100mg錠又は200mg錠の生物学的同等性は示されていないため、100mg以上の用量を投与する際には50mg錠を使用しないこと。」とされていることに注意!
全部の規格をそろえないといけないのか、めんd・・いや、やめておこう・・・
用法用量:
通常、成人にはサクビトリルバルサルタンとして1回50mgを開始用量として1日2回経口投与する。
忍容性が認められる場合は、2~4週間の間隔で段階的に1回200mgまで増量する。
1回投与量は50mg、100mg又は200mgとし、いずれの投与量においても1日2回経口投与する。なお、忍容性に応じて適宜減量する。
併用禁忌:
ACE阻害薬服用中、服用中止後36時間以内→血管浮腫のリスク増加
糖尿病患者でラジレス服用中→非致死性脳卒中、腎機能障害、高カリウム血症、低血圧
がバルサルタンで報告
一包化:可能 バラ錠あり
薬価:未収載 R2.7.27現在
主な臨床成績
安全性
・肝機能障害患者
軽度~中等度肝機能障害患者(Child-Pugh 分類A、B)では、サクビトリルのCmax は健康成人とほぼ同程度、AUC は健康成人の約 1.5~1.9 倍。
バルサルタンの Cmax は健康成人とほぼ同程度、AUC は健康成人の 1.2~2.1 倍。
重度の肝機能障害(Child-Pugh 分類 C)は、中等度の肝機能障害患者よりも曝露量が増加する可能性があり、臨床試験では、重度の肝機能障害患者は、除外されており、推奨される用法・用量が不明であることから、禁忌と設定。
・腎機能障害患者
軽度(Ccr: ≧50mL/min~≦80mL/min)、中等度(Ccr:≧30mL/min~<50mL/min)の腎機能障害患者では、サクビトリルのCmax 及び AUC は健康成人のそれぞれ約 1.5~1.6 倍及び約 2.1~2.2 倍。
バルサルタンのCmaxは健康成人とほぼ同程度、AUC は健康成人の約 1.0~1.4 倍。
重度(Ccr:<30mL/min)の腎機能障害患者では、サクビトリルのCmax 及び AUC は健康成人のそれぞれ約 1.6 倍及び約 2.7 倍。
バルサルタンのCmax及び AUC は健康成人のそれぞれ約 0.9 倍及び約1.3 倍。
・低血圧、高カリウム血症
エンレスト200mg1日2回だと既承認のバルサルタンの最大用量160mgを超えるため、低血圧や高カリウム血症には要注意!
検査上の注意点
エンレスト投与後にBNP は一時的に上昇し、4 週間後でも高値を維持した後、8 カ月後まで徐々に低下する傾向。
NT-proBNP は、エンレスト投与後に低下し、8 カ月後まで低値を維持。
そのため、BNP が定常状態に到達するまでは、臨床的な解釈の混乱を避けるため NT-proBNP を測定することが望ましいとされています。
一方で、エンレスト投与後に BNP が定常状態に到達する時期は、疾患進行、他の心不全治療、合併症(肺疾患、腎疾患等)等の患者の状態により異なるため、エンレスト投与開始からどの程度の期間が経過すれば、BNP が心不全の状態の観察に使用可能となるかを提示することは困難であるとされています。
添付文書では「本剤の薬力学的作用により本剤投与後にネプリライシンの基質であるBNPの上昇がみられることから、本剤投与後に BNPを測定する際は値の解釈に注意すること。」という表記になっています。
私のエリアの基幹病院では、今後心不全の検査値は、NT-proBNPを採用することが決定しているようです。
今までBNPの数値しか見たことないので勉強せねば・・・
考察・感想
PARADIGM-HF 試験などの臨床試験の結果により、海外のガイドラインでは、ACE阻害薬/ARBに忍容性があり、NYHA 心機能分類Ⅱ~Ⅲ度のHFrEF患者に対して、疾病・死亡リスクを更に低下させるためにACE阻害薬/ARBからの切替えが推奨されています。
ですが、日本人での有効性を検証したPARALLEL-HF試験では、エナラプリルに対する有効性が確認できなかったことから、海外の臨床試験のデータをそのまま日本人に当てはめて考えるには、慎重になる必要がありそうです。
もう少し症例数を増やせば、有意差が出たはずという声もあるようですが、PARALLEL-HF試験は、事前に計算したサンプルサイズは満たしていることから、症例数を増やして有意差が出たとしても、PARADIGM-HF 試験の結果ほどではないのではないかと思ってみたり・・・。
まぁ、エナラプリルを対照とした試験のため、エンレストの有効性自体が否定された訳ではないし、新しい選択肢が増えたことは良いことなのかなぁ~
低血圧や高カリウム血症などの有害事象、併用薬にACE阻害薬/ARBがないか確認など、薬剤師も気を付けないといけないポイントがたくさんある薬だと思うので、採用になったら頑張ろ!!
いかがでしたでしょうか?
エンレストについてどう思われますか?
みなさんのご意見やご感想があればTwitterで気軽に絡んでいただけたら喜びます!!
参考:エンレスト錠添付文書、インタビューフォーム、審査報告書
✏オレキシン受容体拮抗薬「デエビゴ」についてまとめてみた
今回は7/6発売予定のオレキシン受容体拮抗薬「デエビゴ」について調べました!
こんなに短期間に更新なんて珍しい・・・
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デエビゴ基本情報
一般名:レンボレキサント
商品名:デエビゴ
名前の由来:Day(日中)+Vigor(活力)+Go(ready to go)
デイビゴで申請したが、ディビゲルと紛らわしいため却下されたようです・・・
薬理作用:オレキシン受容体の2種のサブタイプ(オレキシン1受容体[OX1R]、オレキシン2受容体[OX2R])に対して オレキシンと競合的に拮抗するアンタゴニスト(dual orexin receptor antagonist:DORA)
受容体に対する親和性: デエビゴ OX1R<OX2R、ベルソムラ OX1R≒OX2R
基礎研究では、OX2Rの方が睡眠・覚醒リズムの調節や覚醒からREM睡眠、non-REM睡眠への移行に、より重要な役割を担っていることが示唆されているようです。
規格:2.5mg、5mg、10mg
用法用量:通常、成人にはレンボレキサントとして1日1回5㎎を就寝直前に経口投与する。なお、症状により適宜増減するが、1日1回10㎎を超えないこととする。
食事の影響:食後投与でTmaxが1→3時間に遅延し、Cmaxが約23%低下
警告・禁忌:過敏症の既往歴、重度の肝機能障害患者は禁忌
併用禁忌:なし ※CYP3A阻害剤との併用では2.5mgへ減量
一包化:可能
薬価: 2.5mg:57.3円、5mg:90.8円、10mg:136.2円 R2.6.11現在
製造販売:エーザイ
臨床成績(第Ⅲ相試験)
睡眠日誌を用いた主観的評価(国際共同303試験)、終夜睡眠ポリグラフ検査を用いた客観的評価(外国304試験)による睡眠潜時のベースラインからの変化量でプラセボに対しての優越性が確認
(303試験)ベースライン:55分
投与6か月 デエビゴ5mg:-21.81分、デエビゴ10mg:-28.21分
(304試験)ベースライン:33分
投与29/30日 デエビゴ5mg:-12.00分、デエビゴ10mg:-16.25分
*R2.9.22追記
MRさんが持ってきてくれたデエビゴのパンフレットを読んでみたので、その情報を追記します。
米国睡眠医学会 成人慢性不眠症の診療ガイドラインで、臨床的に有用か否かの判断基準が定義されています。
睡眠潜時の場合はプラセボに比べて客観的評価で10分以上、主観的評価で20ふり以上短縮すれば臨床的有意差があると評価していると記載されていました。
あれ??
この結果だとプラセボと比べて有意差はあるけど、臨床的有意差は??
304試験の結果のグラフは中央値で書いてて、監修医コメントでは平均値で臨床的有意差があると記載されてる…
こういう場合、中央値と平均値はどっちで見たらよいのでしょう??
Twitterでつぶやいてみたところ、なんと!!
本も執筆されている、ある先生がこんなことを優しく教えてくださりました!!
「ベースラインからの変化量を比較するときは平均値の方がベター」
「母集団の代表値を見るときには、外れ値の影響を受けやすい平均値よりも中央値で記載することが多い」
有名な先生とやり取りすることができるのがTwitterの良いところ!
ありがとうございます!!
安全性
肝機能障害について
中等度肝機能障害患者でCmax22%、AUC54%増加→最大5mgまで。
主にCYPで代謝されるため重度の肝機能障害では禁忌。
腎機能障害について
用量調節は不要ですが、重度腎機能障害患者でCmax5%、AUC50%増加のため慎重投与となっています。
傾眠について
傾眠や持ち越し効果のリスクは少ないとされていますが、用量依存的な傾向にあるので10mgでは特に注意が必要そうです。
反跳性不眠、退薬兆候に関連する有害事象について
プラセボと有意差なし。
依存、乱用のリスクについて
臨床試験では認められませんでしたが、類薬同様の注意喚起がされています。
まとめ
ベルソムラと比べ、CYP3A阻害薬(クラリスロマイシンなど)との併用禁忌、一包化不可がないのが嬉しいですね!
ベルソムラ服用中の方に併用薬でクラリスロマイシンが追加されてて、疑義照会したことも実際に経験したので、新しい選択肢ができたのは、良いことではないでしょうか?(併用の場合は2.5mgへの減量をお忘れなく!)
有効性の面では、ベルソムラと比べてどうかといったデータがないため、今のところよく分かりませんが、安全性の面で特筆すべきことは、特にないのではないでしょうか。
ネックなのは、新薬のためR3.4まで14日の投与制限があることですかねぇ・・・
長期処方解禁されたら、使われていきそうな予感がします!
いかがでしたでしょうか?
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参考:デエビゴ錠添付文書、インタビューフォーム、審査報告書
✏高尿酸血症治療薬「ユリス」についてまとめてみた
2020年最初のブログになってしまいました・・・。
ですが細々とやりたいと思っています(●´ω`●)ゞエヘヘ
今回は明日(5/25)発売となった高尿酸血症治療薬「ユリス」について調べたことを書きたいと思います。
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ユリス基本情報
一般名:ドチヌラド
商品名:ユリス
薬理作用:近位尿細管における尿酸の分泌に関与するABCG2、OAT1 及び OAT3 に対する阻害は弱く、再吸収に関与するURAT1 (ゆーらっとわん)に選択的な尿酸再吸収阻害作用を有する尿酸排泄促進薬(選択的尿酸再吸収阻害薬:SURI)
規格:0.5mg、1mg、2mg
用法用量:通常、成人にはドチヌラドとして 1 日 0.5 mg より開始し、1 日 1 回経口投与する。その後は血中尿酸 値を確認しながら必要に応じて徐々に増量する。維持量は通常 1 日 1 回 2 mg で、患者の状態に応じて 適宜増減するが、最大投与量は 1 日 1 回 4 mg とする。
食事の影響:食事の影響はなさそうです。
警告・禁忌:過敏症の既往歴以外はなし。類薬のベンズブロマロンにおける劇症肝炎などの肝障害を避けるように創薬されたようです。
併用注意:なし
一包化:可
半錠:可 割線あり
薬価:30.00円/0.5mg、54.80円/1mg、100.20円/2mg R2.5.24現在
臨床成績(第Ⅲ相試験)
国内第Ⅲ相試験ベンズブロマロン、フェブキソスタットとの非劣性試験(非劣性マージン:-10%)において非劣性が確認
主要評価項目:投与終了時(投与14週後または投与中止時)における投与前値からの血清尿酸値低下率
血清尿酸値低下率の投与群間の平均値の差
ベンズブロマロン:2%[両側95%信頼区間:-1.27%,5.37%]
フェブキソスタット:-2.17%[両側95%信頼区間:-5.26%,0.92%]
安全性
肝機能障害について
劇症肝炎、肝機能障害を克服を目指して創られており、非臨床毒性試験において肝障害を示唆する所見がなかったこと、臨床試験においてもベンズブロマロン、フェブキソスタットと比べて有害事象の発現頻度は同程度とされていることから、添付文書における劇症肝炎の警告、肝障害患者の禁忌について記載はされていません。
そのため、肝障害に関する懸念はないと考えられますが、肝機能障害は他の高尿酸血症治療薬において発現が報告されており、その発生機序は必ずしも明らかになっていないことから、重要な潜在的リスクとされ、市販後も調査対象となっています。
腎機能障害について
腎機能低下患者に対する減量などの規定はありませんが、近位尿細管に作用する薬理作用を考えると腎機能低下例では作用減弱の可能性があることには注意が必要かもしれません。
尿路結石について
尿酸排泄促進作用の薬剤であるため、尿中への 尿酸排泄に伴い、尿酸結石を始めとする尿路結石を誘発する可能性があります。
水分摂取の注意喚起と状況に応じて尿アルカリ化剤(クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合製剤)を併用投与する必要がありそうです。
臨床試験では多くの症例で尿アルカリ化剤を併用されていたようです。
製薬メーカーさんのアピールについて
営業活動自粛が解禁された富士薬品さんが薬局に来られました。
まず言われたのが「非常に効果が強い薬が発売となりました!Σb( `・ω・´)グッ」
「URAT1に選択性もあります!」
パンフレットを見てみると、選択性についてのアピールと効果については第Ⅱ相試験の尿酸値6未満になる達成率のデータでした・・・(¬_¬)シラ-
ちょっと意地悪かもしれませんが、第Ⅲ相試験ではユリノームやフェブリクと比べて非劣性しか言えてないし、なんなら尿酸低下率は選択性があるにも関わらず、劣っているようにも見えることを伝えると、かなり慌てていましたが「選択制については、尿酸排泄を効率的にできており、薬の量を少なくすることができています」とのことでした。
でも、このパンレットの並びだとあたかも効果を強めてそうだし、第Ⅲ相試験のデータはあまり載せたくないのかなと感じてしまいますよね・・・。
MRさん意地悪言ってごめんなさいm(_ _)mスマン
まとめ
ユリノームに見られた劇症肝炎など肝障害を克服した可能性がある薬剤で、安全面では使いやすいかもしれません。
ですが、まだデータが少なく効果もあくまで既存薬との非劣性しか分かっていません。
個人的な見解ですが、今のところフェブリクでよっぽど尿酸が下がらないような方に上乗せするようなケース以外の選択肢はないかもしれませんね・・・
そもそもそんなケース自体があまりないかもしれませんが(;^ω^)
尿酸低下ではなく、真のアウトカムを改善するようなエビデンスが今後出てくることに期待しておきましょう!
いかかでしたでしょうか?
添付文書、承認審査報告書を元に書いていますが、間違いがあれば、教えてください!
ユリスのここが素晴らしい!全然ダメ!などTwitterなんかで気軽に絡んでくれると嬉しいです!!\(≧U≦)/
✏末梢性神経障害性疼痛治療薬「タリージェ」についてまとめてみた
先日、「タリージェ」の商品説明会があったため、自分で調べた内容をまとめてみました。φ(..;)勉強
添付文書などの情報はこちらからどうぞ。
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タリージェ基本情報
一般名:ミロガバリンベシル酸塩
商品名:タリージェ
名称の由来 はTargeting を由来とした“Tar”、Ligand を由来とした“Lig”を組み合わせ、「タリージェ (Tarlige)」とした。
製造販売元:第一三共 日本発の新薬
規格:2.5mg、5mg、10mg、15mg
薬価:78.00円/2.5mg、107.70円/5mg、148.70円/10mg、179.60円/15mg
標準用量でのリリカとの比較:
359.2円/タリージェ15㎎×2錠 vs 306.8円/リリカ150㎎×2錠
※R1.8.14現在
用法及び用量:
通常、成人には、ミロガバリンとして初期用量 1回5mgを1日2回経口投与し、その後
1回用量として5mgずつ1週間以上の間隔をあけて漸増し、1回15mgを1日2回経口投与する。
なお、年齢、症状により 1回10mgから15mgの範囲で適宜増減し、1日2回投与する。
初期用量:
第Ⅲ相試験の解析結果から、1週間の漸増期と比較し、2週間の漸増期を設定した場合に、傾眠及び浮動性めまいの発現確率が低下とされています。
腎機能低下患者における用量調節:
中等度の腎機能低下⇒ 2.5mg 1日2回から投与を開始し、推奨用量は 7.5mg 1日2回
重度の腎機能低下⇒ 2.5mg 1日1回から投与を開始し、推奨用量は7.5mg 1日1回
臨床薬理試験の結果から、中等度機能低下で1/2量、重度機能低下で1/4量投与で健常人の用量と同程度と考えられ、設定されています。
食事の影響:
食事の影響はなさそうです。
併用注意:
併用禁忌はありませんが、併用注意の中にシメチジンがあり、整形外科ではシメチジンがあえて使われるケースもあると思いますので、注意が必要なのかなと思います。
臨床成績(第Ⅲ相試験)
DPNP(糖尿病性末梢神経障害性疼痛)患者824例(日本人597例を含む)を対象とした14週間のプラセボ対照試験での、14 週時の疼痛スコアにおいて、30mg/ 日群(-1.81)でプラセボ群(-1.31)と比較して統計学的に有意な改善が認められた。
⇒15mg、20mgは有意差でていない。
これについてMRさんに聞いてみたところ、DPNP患者はそもそもの痛みが取りづらいため、このような結果になったのではと言っていました。
PHN(帯状疱疹後神経痛)患者763例(日本人611例を含む)を対象とした14週間のプラセボ対照試験での、14 週時の疼痛スコアにおいて、20mg/日群(-1.68)、30mg/日群(-1.97)でプラセボ群(-1.20)と比較して統計学的に有意な改善が認められた。
リリカとの比較データ
直接比較はありませんが、疼痛スコアのデータから、同程度と考えていると審査報告書には記載がありました。
商品説明会では、作用機序である、電位依存性カルシウムチャネル α2δ サブユニットに対する結合乖離パラメータの違いを説明していましたが・・・
どうなんでしょう?
タリージェ適正使用ガイド
めまい・傾眠・意識消失について、肝機能障害について、体重増加について、離脱症候群について、視覚障害についての記載があります。
個人的にリリカ⇒タリージェ、タリージェ⇒リリカの切り替え例も今後増えると思ったので、離脱症状についても効果のように用量依存的なのか聞いてみたところ、用量依存的と考えられているが、今後の市販直後調査のデータが出てきたら、報告しますとのことでした。
切り替えの際は、スパッと切り替えるのではなく、元に使っていた方を減量しながら、少量上乗せしていくことを推奨しているようです。
まとめ
冒頭に書いたようにタリージェは国産の薬で日本発となるため、現状では臨床試験のデータは豊富ではありません。
また、開発段階では、糖尿病性末梢神経障害性疼痛及び帯状疱疹後神経痛の二つのモデル 疾患以外の末梢性神経障害性疼痛の検討はされておらず、今後情報収集していくこととされていることも少し気になります・・・
まだ発売したばかりで新薬扱いのため、14日制限であることや、過酷試験のデータから一包化はできないこともネックかなと個人的には思います。(;´∀`)
しかし、リリカで増量したくても眠気などの副作用が出てしまって増量できない、効果がなかなか得られずに苦しんでおられる方も多くみられますので、選択肢が増えたことは喜ばしいことなのかなと思います。.ヽ(^Д^*)/. ゜
以上、タリージェについてまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか?
PMDAから入手できるIF、審査報告書などの情報から記載していますが、間違い等あれば、教えてください!
タリージェのここが素晴らしい、または良くないよね~という感想あれば、気軽にTwitterで絡んでください。(*´∀`*)
ビビアントの有効性について~製薬メーカー製品説明会で思ったこと~
今、こうしてブログを書いているのも、実に半年ぶり・・・
平成が終わり、2019年も半分が終わった、7/2です (;゚д゚)ァ....
ブログのこと忘れたわけではなかったのですが、忙しさを理由に全く更新していませんでした。
反省です _| ̄|○
のんびり更新できるときに更新していくスタイルで令和も頑張ります!!
さて、久しぶりの更新なのに大したことは書けません。
先に謝っておきます。 m(._.*)mペコッ
タイトルにも書いた通り、先日病院でのビビアントの製品説明会に参加しました。
その時に思ったことなのですが・・・
その前にビビアントを軽く復習しておきましょう! ( ..)φメモメモ
名称:ビビアント
一般名:バゼドキシフェン
用法用量:1 日 1 回 1 錠(20mg)で、食事の有無や時間にかかわらず服用できる。
『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版』によると、新規椎体骨折発症率は40%の有意な低下が認められ、椎体骨折抑制効果は経口ビスホスホネート製剤と同等であることが示唆されたとあります。(非椎体骨折においてはプラセボとの間に有意差は認められなかった)
また、FRAXを用いた解析では、骨折発症確率の高い患者に対して、治療効果がより高い傾向はバゼドキシフェンの特徴の1つであり、ラロキシフェン(エビスタ)では認められないことが示されたとあります。
さらに、費用対効果の面でもラロキシフェンより優れていることが示されたと書いてあります。
このあたりが現在ではエビスタよりもビビアントが使われる理由になっていると思われます。
MRさんも赤字で書いたことを説明会の中のスライドで示していたし、わざわざその部分を切り取って、パンフレットに引用したりもしていました。
昔の自分はきっと「おぉ~、ビビアント40%も下げるのか・・・。すげー!!」
って感じで終わっていたと思うのですが、
今の自分は「40%って聞くとすごそうだけど、絶対値で見ると15%くらい(うろ覚えですみません)が10%くらいになっているいうことか・・・。これの臨床的な意義はどれくらいあるんだろう?すごいようなすごくないような・・・もやもや」
ってな感じになりました (;´д`)トホホ…
一見なんかもやもやしてる分ダメな印象があるかもしれませんが、個人的には製薬メーカーの言われた情報を鵜呑みにしないように自分で考えることが少しはできているのかなぁ・・・
なんて思ったりしています。(自分に甘いスタイル)
このデータの元になっている原著論文(PMID: 18665787)を見てみると、プラセボだけでなくラロキシフェンも比較対象となっていて、ビビアントと効果はほぼ同じ結果となっていました。
ガイドラインでは費用対効果のことが書かれていましたが、新規椎体骨折予防という観点では日本ではジェネリックがあるラロキシフェンが選択肢にあってもよいのかなぁなんて更にもやもやする結果に ヽ(´Д`;)ノアゥア...
ですが、このもやもやを抱えながらも、日々勉強を続けてレベルアップしていきたいなぁと思います!
令和こそもっと論文を気軽に読めるように頑張ろ!!
薬局薬剤師の存在意義を考えてみた
薬局業界は2019年も厳しくなりそうですね。
薬局薬剤師は存在意義を問われ、バッシングを受けています。
薬局薬剤師は今まで横から流れてくる処方箋をさばくことに追われ、それしか考えてない人も今でも多いのも原因だと思います。
ですがネガティブなことばかり言っても何も始まりません。
そこで私なりに考える薬剤師の存在意義を考えてみました(^^)
①患者、顧客を薬によるリスクから守る(副作用やポリファーマシー)
②薬の専門家として、他の医療者へ公平な立場から医薬品の情報提供をする
③OTCや健康食品などを通し、地域住民の健康増進に寄与する
こんなところでしょうか。
①を達成するためには医師とは違う視点から物事を考え、薬理学や薬物動態学などの基礎薬学、医学論文などの臨床に関する情報を勉強しなくてはなりません。
服薬指導においても、ただ症状や検査値を確認するのではなく、リスクから守るために意図を持った服薬指導を心がけたいですね。
②は新薬に関しては特に薬剤師がもっと情報提供すべきだと思っています。
PMDAの承認審査報告書や医学論文などを活用して、公平な立場で医薬品を評価できる必要があると思います。
MRさんを悪く言う訳ではないですが、自社製品を売るために少々オーバーな表現を使い、医師にアピールします。
それに他者の医薬品との比較データなんかはあまり言えないようになっています。
③についてですが、薬局薬剤師はもっとOTCに関与する必要があると思います。
ですが、現在の保険制度ではフリーアクセスで安く医療機関を受診することができます。
そういった事情もあり、OTCに積極的な薬局の方が少ないでしょう。
しかし、国の財政状況を考えるとこういう状況は、もう長くは続かないと思います。
そうした時に薬局薬剤師がOTC販売で軽症は対応し、そうでない場合は受診勧奨できるスキルを持つ必要があります。
このスキルは薬局薬剤師に1番足りてないですが、今後1番重要になってくるスキルなのではないかと思います。
皆さんも2019年気持ち新たに、自分なりの薬剤師の存在意義を考えてみてはどうでしょうか?
ここは違う!もしくはこんなスキルも必要!
などあれば、教えてください(^^)
簡単に薬効を説明し、袋に詰めるだけの薬剤師は今後淘汰されていくことは簡単に予想できますよね。
そうした中で、薬局薬剤師が今後もっと地域住民、多職種から頼られる存在になるように頑張ろうと思います。
2018.12.31
皆さん、こんにちは。
いかがお過ごしでしょうか。
私は食っちゃ寝して冬休みが終わっていく予感…
今年はじめてブログを始めました。
始めてみて、皆さんの凄さを実感。
なぜ、あんなに情熱を持って、見やすく、そして分かりやすく情報発信できるのか…
私も早くそうなりたいと思っているので、来年はもう少しブログの更新頻度を上げていきたいと思っています。
慣れてきたら、有料のブログでこういうのをやってみたいとかはあるのですが、あまり目標を高くしすぎるよりは低めのハードルを確実にクリアしていきたいです。
最後にこんなブログを見てくださった方に感謝致します。
今後お役に立てる情報を少しずつでも発信していきます!
皆さま良いお年をお迎えください!!